今回のブログは、なるべくネタバレなしで書評をしてみます。
作品:『左ききのエレン』
著者: かっぴー、 nifuni
圧倒的な芸術的才能を持つ「天才」山岸エレンと、広告代理店でデザイナーとして働きながら、自分が天才ではないことに苦悩する「凡人」朝倉光一を軸にした物語。
作者は元 広告代理店のアートディレクターで、2000年代のリアルな広告業界が主な舞台です。
スタークリエイターの話と思って避けていたけど、改めて読むと良作でした。
自分が社会人になった時期とも重なり、主人公に対してこれほど共感した作品は初めてかもしれません。
この作品の最大の魅力は、クリエイターが直面する「才能の格差」という残酷な現実を、一切の妥協なく描いている点にあります。
新人の頃は皆「自分には何か特別な力がある」と信じて業界の門を叩きます。
しかし、現場で本物の天才を目の当たりにしたとき、あるいは数字や様々な意向に忙殺されたとき、かつての輝きは少しずつ曇っていきます。
主人公・光一の姿は、まさにそんな自分の写し鏡です。
作中、心に深く突き刺さる数多くの名言があります。
「天才になれなかった全ての人へ」
これは単なる慰めではありません。「自分は天才ではない」と認めたところから、本当の戦いが始まるのだというメッセージです。
「才能の正体は、集中力の質である」
これは名言というより、学びになる言葉です。
本作では、クリエイターの集中状態を「長さ(集中強度)」「深さ(集中深度)」「早さ(集中速度)」の3つの要素で定義しています。
3つの要素はそれぞれ相関する傾向があり、それに努力による練度を掛け合わせたものが集中力の質となります。
強度 + 深度 + 速度 × 練度(努力) = 集中力の質
そして集中力の質を万全に近づけるスイッチを “ルーティン”と呼びます。
場所なのか、時間なのか、道具なのか、行動パターンなのか、 自分のルーティンが見つかるのはいつの日やら…
「クソみたいな日に、いいものつくるのがプロだ」
なかなかのパワーワードです。光一の上司である、エースAD神谷さんのセリフです。
コンディションが最悪な日でも、アイデアが出ない夜でも、納期はやってきます。
その中でもクオリティの高い成果を上げること。 作ったものだけで勝負しろ。この世界に頑張ったで賞などないのだからと言われますが、現実はそうでもないこともよく描かれています。
最後は好きなセリフをご紹介。
「何度も負けるし、何度も折れる、だから一番必要な力は再起する足腰だ」
主人公たちが美大に進学する時に、予備校の学長が贈った激励です。
『左ききのエレン』は、成功物語ではありません。
挫折し、打ちのめされ、それでも「作る」ことを諦められない人たちの物語です。
アートやファッション業界の話もあり、娯楽としても楽しめます。
デザイナー以外にもコピーライターや営業、カメラマンやモデルにスポットを当てた話もあり、登場キャラが魅力的だからか、あまり説教臭くないです。
ちなみに自分は原作ではなく、作画を変えたリメイク版を主に読みました。
24巻で完結したけど、4月からのアニメ化と合わせて続編の25巻が、本日5/1に発売されました。
AIの時代をクリエイターの目線でどう描かれるか楽しみです。
「ひゃくえむ。」もアツいけど、おすすめの作品です。
やはり“大事なことは全部マンガが教えてくれた”と感じます。
カバーイラストは一つながりになっており “Reunion” がテーマの21-22巻は、1-2巻との対比が印象的






